化学

環境計量士の試験対策 分析機器をざっくり説明! その12 ~pH計について~

こんにちは!

Thinkです。

 

これまで、環境計量士(濃度関係)(以下環境計量士と略す)の国家試験合格の体験談として、問題の解き方について記事を書いてきました。

試験まで2か月を切りましたが、既に問題集を何回も勉強されているかたなかなか時間が取れなくて勉強できていないかた、さまざまな方がいらっしゃると思います。

 

今回は、なかなか時間が取れなくて勉強できていない方のために、機器分析について、ざっくり説明します。

もちろんきっちりと原理から説明するのが一番ですが、すべて書くと辞典のような文字数になってしまうので「詳しい説明は省くが、こうゆう分析できる」のようなざっくりとした感じに説明します。

 

 

今回はpH計について説明します。

 

 

①pHとは?  

水溶液の性質を表す単位の一つで、水溶液中の水素イオン(H+)の濃度を表す

pHは7が中性です

数値が7より低くなると酸性といいます→味は酸っぱく、金属と反応して水素を出す

数値が7より高くなるとアルカリ性といいます→味は苦く、炭酸ガスを吸収しやすくなる。また、触るとぬるぬるする。

 

 

②水素イオンとは?

文字通りイオン化した水素のこと

一般的に陽イオンのH+のことを言い、モル濃度(mol/L)で表される別名プロトン(陽子)

名前の由来:水素は原子核が陽子1つで、電子が1つだけなので、そこから電子が外れてイオン化すると陽子のみになるため、プロトンと呼ばれる。

 

ちなみに陰イオンのHも存在し、こちらはヒドリドイオンと呼ばれ、他の物質を還元する作用がある。

 

環境計量士の試験でヒドリドイオンは、有機化合物の還元反応の問題に出ることが多く、水素化ホウ素ナトリウムという物質は覚えておいたほうが良い。

プロトンは、pHや解離定数を求める計算問題として出ることが多い。

 

pHとはその水溶液中にどれだけの割合でH+が含まれているかの指標

どのような水溶液でも、温度が一定であればH+濃度とOH濃度には、掛け算すると10−14になるという関係がある。

そのため、H+濃度もしくはOH濃度のどちらか一方の値が判明すれば、もう片方の値もわかる。

 

③pHの定義

pHは次の式で定義される

pH=-log10(水素イオン濃度)

経緯:pH測定が必要な水素イオン濃度が非常に低い水溶液の場合は、少数点以下が非常に多く、数学的に取り扱いが不便であるため、H+濃度の逆数を常用対数で示したものをpHとした。

しかしその後の研究で定義の変更があり、以下のように変更された

pHは水素イオン濃度ではなく、水素イオンの活量に関係することが判明した。

そのため、定義は以下のように変更した

pH=-log10(H+の活量)

H+の活量=活量係数×H+濃度

 

活量とは?

理論的な溶液と実際の溶液との違いを補正した値のこと。理論値が成り立つのは低濃度のみであり、高濃度になると理論値とかけ離れた値になるため、それを補正する必要がある。

そのため、理論濃度に活量係数をかけたものが、実際の濃度(=活量)という。

 

④pHの値と水素イオン濃度の関係

pH4の場合→水溶液中の水素イオン濃度が10-4

pH7の場合→水溶液中の水素イオン濃度が10-7

pH4とpH7で比較すると数値の差は3だが、H+濃度では103の違いがある。

つまり濃度が1000倍違うことになる

 

⑤pH計について

pH目盛の定義

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⑥ガラス電極法

pHガラス電極と比較電極の2本の電極を用いて、この2極間に生じた電圧(電位差)を知ることで、水溶液のpHを測定する方法。

ガラスの薄膜の内側・外側にpHの異なる液があると、薄膜部分にpHの差に比例した起電力が生じる。

この薄膜をpHガラス応答膜という。

 

理論上、溶液が25℃の場合、2つの溶液のpHの差が1であれば、約59mVの起電力が生じる。

通常、pHガラス電極の内部液には、pH7の液を用いるため、pHガラス応答膜に生じた起電力を測定すれば、サンプルのpH値がわかる

 

pHガラス応答膜に生じた起電力を測定するには、もう1本電極が必要でこの電極を比較電極という。

比較電極は電位が極めて安定した電極である必要があるため、そのために液絡部にピンホールを開けたり、セラミックを施したりしている。

 

ガラス電極:pHの差による起電力が正確に生じるように工夫した電極

比較電極:pHの差による起電力が発生しないように工夫した電極

 

⑦pH標準液

pHの測定は、必ず標準液によるpH計の校正を行う

標準液としては、pHが変わりにくい緩衝液を使用する

 

JISで5種類の標準液と、各温度におけるそれら標準液のpH値を規定している

  1. しゅう酸塩標準液(pH1.68)
  2. フタル酸塩標準液(pH4.01)
  3. 中性リン酸塩標準液(pH6.86)
  4. ほう酸塩標準液(pH9.18)
  5. 炭酸塩標準液(pH10.02)

 

これらの標準液を自分の手で作ることは難しくないが、値付けする設備がない場合はかなり面倒なので、市販品を購入するほうが経済的

 

⑧校正について

pH標準液を用いて計器のゼロ点及び感度(スパン点)を正しく調整することを意味する

校正の一例を以下に記載する

まずは、中性リン酸塩緩衝液により、pH7付近の校正を行う

  1. pH計本体に必要な検出部(電極類)を取り付け、pH計本体の電源を入れる
  2. 検出部は、純水で繰り返し3回以上洗い、きれいな柔らかい紙で拭っておく
  3. 中性リン酸塩標準液をビーカーに採って検出部を浸し、pH標準液の温度に対する値に調整して校正する
  4. なお、温度補償用ダイアルの設定があるものは、メモリ値をpH標準液の温度に合わせる
  5. 検出部を中性リン酸塩標準液から引き上げ、純水で繰り返し3回以上洗い、きれいな柔らかい紙で拭っておく

その後サンプルの予想されるpHを挟み込む形で、標準液で校正する

pHが7未満(酸性)と予想されるのであれば、しゅう酸塩緩衝液標準溶液か、フタル酸塩緩衝液を用いる

pHが7を超える(アルカリ性)と予想されるのであれば、ほう酸塩緩衝液か、炭酸塩標準溶液を用いる。

 

再び中性リン酸塩標準液から同様の操作を行い、pHの指示値がpH標準溶液の温度に対するpHの±0.05以内に一致するまでこの操作を繰り返す。

 

⑨pH測定における注意点

  1. 溶液の液温について→溶液のpH値は固有の温度特性を有するため、できるだけ正確な温度管理が必要
  2. 比較電極内部液の補充口を開けておく
  3. 比較部の内部液を十分に入れておく
  4. 内部液に気泡があれば、電極を振るなどして取り除く
  5. よく洗浄された電極を使用する
  6. 比較電極内部液がサンプル側に流出するため、内部液の液面はサンプルの液面より高い位置にしておく
  7. 電極表面に気泡がある場合は取り除く
  8. 液絡部及び温度補償電極は液面よりも下に来るようにする
  9. 測定が静電気の影響を受ける場合は、内部液を補充口の位置まで入れる
  10. 測定容器は密閉のできる物を用いる(外気の影響を防ぐため)
  11. 測定容器は純水で洗浄した後にサンプルで共洗いする
  12. 測定中はサンプルをゆっくり攪拌する
  13. 個別電極で測定する場合は比較電極はガラス電極よりも高い位置にセットする
  14. あらかじめ電極をサンプルに浸しなじませておく
  15. 低導電率水、低緩衝能のサンプルの測定の場合は、適した手法や電極を用いる

 

⑩まとめ

pH計の取り扱い方法に関する問題が出やすいです。

また、イオン電極と毎年交互に出題される傾向がありますが、ほとんど同じような内容なので、両方覚えていてください。

また、pHを算出する問題では、水素イオン濃度を求めなければなりませんが、単純ではなく水の解離を考慮しなければならない少し難しい問題が出やすいので、試験のときは即答しないように気を付けてください。

 

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